全国市町村国際文化研修所、通称JIAMで開催された 「地方議員のための政策法務〜政策実現のための条例提案に向けて〜」 の3日間研修に参加しました。
全国から地方議員が集まり、政策法務や条例制定について学び、実際にグループで条例案を考える実践的な研修です。
今回の研修でとても大きかったのは、講義で知識を学ぶだけでなく、他市の議員さんと交流し、それぞれの自治体の実情を直接聞くことができたことです。
人口規模も、地域の広さも、産業も、子育て環境も、議会の状況も、自治体によって本当にさまざまです。 同じ「子どもの声を聞く」「地域の支え合いをつくる」と言っても、都市部と中山間地域では課題の出方も違います。
また、すでにこどもの権利に関する条例を制定している自治体や、子ども・若者の意見を市政に反映する仕組みづくりに取り組んでいる自治体の話も聞くことができました。
「宍粟市ではどうだろう」 「同じようにできること、置き換えが必要なことは何だろう」 と考えるきっかけをたくさんいただいた3日間でした。
日々の議会活動の中でも「もっと制度のことを理解したい」「市民の声を、どう政策や条例につなげていけばよいのかを学びたい」と感じる場面がたくさんあります。
今回の研修は、その土台を学ぶ貴重な機会となりました。
1日目:政策法務と条例づくりの基本を学ぶ
初日は、政策法務の考え方や、条例をつくるうえで必要な基本を学びました。
「政策法務」と聞くと、少し難しい言葉に感じます。
簡単に言うと、 地域の課題を見つけ、その解決のために法律や条例をどう活用するかを考えることです。
単に「法律に違反していないか」を確認するだけではなく、地域課題を解決するために、条例や制度をどう使うのかを考える、前向きな取り組みだと学びました。
条例は、自治体が独自に定めることのできる大切なルールです。
ただし、思いだけでつくれるものではありません。
本当に条例が必要なのか
条例以外の方法では解決できないのか
法律との関係に問題はないか
誰に、どんな役割や義務を求めるのか
予算や運用体制はどうするのか
市民にとって分かりやすい制度になるのか
こうしたことを一つひとつ丁寧に考える必要があります。
特に印象に残ったのは、「立法事実」という考え方です。
立法事実とは、簡単に言えば、 その条例が必要だと説明できるだけの事実や根拠 のことです。
「困っている人がいる」 「今の制度では対応できていない」 「同じ課題が繰り返し起きている」 「条例で定めることで、より実効性が高まる」
そうした事実を集め、整理することが、条例づくりの出発点になります。
2日目:メンバーで一日を通して演習、話し合い、制作へ
2日目は、グループに分かれて一日を通して演習を行いました。
私たちは7班でした。
7班では、メンバーで話し合いを重ねながら、条例案のテーマや方向性を考え、発表資料を制作していきました。
限られた時間の中で、各自治体の実情や、それぞれの議員活動の中で感じている課題を出し合いました。
「子どもの声を本当に聞けているのか」 「子どもや若者は、まちづくりの主体として扱われているのか」 「意見を聞いた後、その声はどこへ行くのか」 「聞くだけで終わらせず、政策につなげるにはどんな仕組みが必要なのか」
そうした問いを何度も話し合いました。
全国から集まった議員同士だからこそ、実際の自治体の違いも見えてきます。 すでにこどもの権利条例や子ども参加の仕組みを持っている自治体もあれば、これから検討していきたい自治体もあります。
条例がある自治体の話を聞くことで、条例は「作って終わり」ではなく、その後にどう運用し、どう子どもたちに届く形にしていくかが大切なのだと感じました。
私たちの班の条例案:「主役は子ども・若者条例」
私たち7班では、 「主役は子ども・若者条例」 という条例案を考えました。
この名前には、これまで政策形成の場で主体として扱われにくかった子どもや若者を、まちづくりの中心に位置づけたいという思いを込めました。
もちろん、大人や高齢者が脇役という意味ではありません。 まちづくりはすべての世代で進めるものです。
ただ、選挙権を持たない子どもたちや、進学・就職などで地域との関係が変化しやすい若者たちの声は、どうしても政策に届きにくい面があります。
だからこそ、あえて「主役」という言葉を使い、 子ども・若者を“政策の対象”ではなく、“一緒にまちをつくる主体”として位置づける ことを大切にしました。
宍粟市を想定して考えたこと
7班では、宍粟市をモデルにして条例案を考えました。
宍粟市は、面積が琵琶湖とほぼ同じ約658平方キロメートルもある、とても広いまちです。 山崎町・一宮町・千種町・波賀町の4町があり、地域によって暮らしの環境も、学校までの距離も、交通の状況も異なります。
人口減少や少子高齢化が進む中で、子どもや若者が地域でどのような思いを持っているのか。 本当に自分の意見を言える環境があるのか。 大人が、その声を受け止める準備ができているのか。
そうしたことを考えながら、条例案を組み立てました。
子育て中の方が、地域の未来や子どもの育ちに不安を感じている。 子ども自身も、大人の前では本音を言いにくかったり、「言っても変わらない」と感じていたりしています。実際に私の活動の中から子どもたちより聞こえてくる言葉です。
だからこそ、子どもや若者の声をただ聞くのではなく、 安心して本音を言える環境をつくること が必要だと考えました。
7つの「聞いて聴いて」サイクル
7班の条例案の柱にしたのが、 7つの「聞いて聴いて」サイクル です。
これは、子どもや若者の意見を聞いて終わりにしないための仕組みです。
流れとしては、
1.子ども・若者が意見を表明する
2.行政や大人がその意見を受け止める
3.政策として検討する
4.反映できるものは反映する
5.反映できなかったものも理由を説明する
6.子ども・若者にフィードバックする
7.「自分の声が届いた」という実感が、次の参加につながる
というものです。
子どもに意見を聞く取り組みは、各地で行われています。 しかし、アンケートを取ったり、子ども議会を開催したりしても、その後どうなったのかが子どもたちに伝わらなければ、「言っても変わらない」という気持ちにつながってしまいます。
大切なのは、聞いた後です。
採用された意見だけでなく、すぐには実現できない意見についても、「なぜ今は難しいのか」 「今後どう検討するのか」 を子どもたちに分かる形で返していくことが必要です。
このフィードバックまで含めて制度にすることで、子どもや若者が社会の一員として扱われている実感を持てるのではないかと考えました。
デジタルとリアルを組み合わせる
7班では、子ども・若者の声を聞く方法として、デジタルとリアルの両方を組み合わせることも提案しました。
たとえば、リアルな場としては、
中学生議会
子ども市長ミーティング
市長との子どもミーティング
コミュニティ・スクールや地域の教育会議
学校や図書館、公共施設での意見募集
などが考えられます。
一方で、デジタルの仕組みとして、
Webアンケート
QRコードでの意見投稿
子ども・若者向けの分かりやすい意見投稿フォーム
投稿された意見の検討状況を見える化する仕組み
なども提案しました。
特に話し合いの中で出たのが、 Amazonや宅配便の配送状況のように、自分の意見が今どの段階にあるのか分かる仕組み です。
たとえば、
「受け付けました」
「担当課で確認しています」
「実施に向けて検討中です」
「すぐには難しいため保留しています」
「実現しました」
というように、子どもにも分かる形で進捗を見える化できれば、自分の声がどこかで止まってしまったのではなく、きちんと扱われていると感じられます。
これは、子どもたちの自己肯定感や、まちづくりへの参加意識にもつながるのではないかと思いました。
子ども・若者の4つの権利
7班では、子ども・若者が持つ権利として、次の4つを大切にしました。
知る権利
意見を表明する権利
参加する権利
結果を知る権利
特に「結果を知る権利」は、とても大切だと感じました。
意見を聞くだけなら、比較的取り組みやすいかもしれません。 しかし、聞いた意見をどう扱ったのか、なぜ反映されたのか、なぜ反映されなかったのかまで説明するには、行政側にも覚悟と仕組みが必要です。
でも、そこまでして初めて、子どもや若者は 「自分たちはまちづくりに参加している」 と感じられるのだと思います。
3日目:全10班の発表と、多様な自治体の実情
3日目は、全10班が条例案を発表しました。
地域支え合い、議会ハラスメント防止、子ども・若者参加、太陽光発電規制など、テーマはさまざまでした。
それぞれの班の発表を聞いていると、自治体ごとの課題の違いがよく分かりました。
人口減少や高齢化、自治会加入率の低下、孤独・孤立。 議会内でのハラスメントや、職員との関係。 子どもや若者の声を市政にどう反映するか。 再生可能エネルギーを推進しながら、景観や防災、住民生活の安心をどう守るか。
どのテーマも、宍粟市にとっても無関係ではありません。
他市の議員さんと話す中で、 「うちの市ではこういう課題がある」 「すでにこういう条例をつくっている」 「制度はあるけれど、運用が難しい」 といった実際の声を聞くことができました。
研修のよさは、講師から学ぶだけではなく、こうした全国の議員同士の学び合いにもあると感じました。
条例は「思い」だけではなく「仕組み」にするもの
3日間を通して感じたのは、条例は「こうなったらいいな」という思いだけでは作れないということです。
もちろん、出発点には思いがあります。
困っている人を支えたい。 子どもの声を大切にしたい。 議会をよりよい場にしたい。 地域の環境を守りたい。
その思いはとても大切です。
けれども、条例にするには、そこからさらに、
何が課題なのか
どんな事実があるのか
どんな制度がすでにあるのか
どこに足りない部分があるのか
誰が実行するのか
どのような財源が必要なのか
市民にどのような影響があるのか
を具体的に整理しなければなりません。
条例は、思いを「仕組み」に変えるものです。
そして、仕組みにするからこそ、続いていく力になります。
講評で学んだこと
発表後の講評では、条例としてさらに深めるための視点をいただきました。
たとえば、 「子ども・若者が意見を表明できる環境を整備する」と書くだけでよいのか、 それとも、具体的な事業や仕組みまで条例に書き込むのか。
これは、理念条例にするのか、実効性のある条例にするのかという大きな分かれ目です。
また、「行政が説明しなければならない」と義務として書くのであれば、 どの意見に対して説明するのか、 どの場で出された意見を対象にするのか、 対象範囲を明確にする必要があるという指摘もありました。
これはとても重要な学びでした。
「子どもの声を大切にする」と言うことは簡単です。 でも、条例にするなら、誰が、何を、どこまで行うのかを明確にしなければなりません。
思いを制度にするには、言葉の整理と仕組みの設計が必要なのだと実感しました。
宍粟市に持ち帰りたいこと
今回の研修を通して、宍粟市でも、子どもや若者の声を市政に反映する仕組みについて、さらに考えていきたいと思いました。
宍粟市の子どもたちは、自分の意見を安心して言える環境にあるでしょうか。 その声は、市政や地域づくりに届いているでしょうか。 「聞きました」で終わらず、返事が返ってくる仕組みはあるでしょうか。
子どもや若者の声を大切にすることは、単に子ども施策だけの話ではありません。
交通、地域づくり、学校、居場所、産業、福祉、防災など、まち全体のあり方につながります。
今回の研修で学んだことは、宍粟市をモデルにして、他市の議員6人が集まって考えた案ではありましたが、沢山のアイデアや実効性、有効性、効率性を洗い出すことが出来ました。
今後の一般質問や委員会活動、政策提案につなげていきたいと思います。
学び続ける
分からないことも多く、議案や条例を読むたびに、もっと勉強しなければと感じます。
でも今回の研修を通して、条例や法律は遠いものではなく、市民の暮らしとつながっていることを改めて感じました。
条例は、まちの未来をつくる道具です。
他市の議員さんとの交流を通して、自治体ごとの悩みや取り組みを知ることができたことも大きな財産になりました。
この学びを宍粟市に持ち帰り、子どもや若者の声をはじめ、市民の声を政策につなげられるよう、これからも学び続けていきます。
7班のメンバーの皆さん、この度は3日間ありがとうございました。いろんな視点、アイデアなどの意見交換ができ、短い時間でしたが、大変刺激となりました。それぞれのまちへ帰った後も、それぞれのまちで市民の福祉増進のため共に励み、切磋琢磨してきましょう。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。
今回の研修は、政務活動費を利用していかせていただきました。
確定ではないですが、概算となりますことご了承ください。また宍粟市HPで報告書と共に掲載となります。
研修:7500円
電車:5080円
駐車場:1500円
ガソリン代:2370円
合計:16,450円