公民連携で地域を再生する 〜オガールが実践してきた“協働のデザイン”から学んだこと〜

2026年8月11日

先日、JIAM研修の中で、岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」に関する講演を聴く機会がありました。

JIAM研修

JIAM報告

https://www.jiam.jp/workshop/report.html?t=26603

講師は、株式会社オガール代表取締役の岡崎正信さん。テーマは「公民連携で地域を再生する」。人口減少や公共施設の老朽化、財政の厳しさに直面する地方自治体にとって、非常に学びの多い内容でした。⁠⁠​

オガールプロジェクトは、岩手県紫波町で進められてきた公民連携のまちづくりです。図書館を核とした複合施設、バレーボール専用体育館、保育園と小児科を組み合わせた子育て支援施設、さらに農業を再編集する中山間地域のプロジェクトなど、単なる施設整備ではなく、「人が集まり、暮らしが続き、地域の価値を高めていく」ための実践が積み重ねられていました。⁠⁠​

「歩きたくなるまち」は、制度だけではつくれない

講演の中で印象的だったのは、「歩きたくなるまちをつくろう」という言葉です。

近年、全国でウォーカブルなまちづくりが注目されています。

しかし岡崎さんは、バスやライトレールなどの交通手段が整っていても、日陰がなく、暑く、居心地の悪い場所であれば、人は歩かないと話されました。大切なのは、制度や計画だけではなく、木陰や緑、風景、香り、音といった五感に届く空間づくりです。⁠⁠​

特に「樹冠率」、空から見たときに木の葉が地面を覆っている割合の話がありました。

暑さが厳しくなるこれからの時代、人が外に出たくなるまちにするには、緑や木陰がますます重要になります。駐車場や建物だけでなく、100年後に見ても「この判断は正しかった」と思える公共空間をどう残すのか。宍粟市のまちづくりを考えるうえでも、大切な視点だと感じました。

他にも、暑い日にやっていたイベントを、1ヶ月前倒しされた際には、来場者が1.5倍になるといったこともあるそうです。

気候にもよって人の動きは大きく変わりますので、今後の様々なあり方も考えて行くことも大切になると思います。

公共施設は「建てて終わり」ではない

もう一つ強く心に残ったのは、公共施設に対する考え方です。

岡崎さんは、公共施設も子どもと同じように、つくった後に健全に育てなければならないと話されました。

つくられた公共施設をきちんと育てなければ、施設そのものが魅力を失い、周辺エリアまで元気をなくしていく。反対に、優れた公共施設がある場所では、その周辺の不動産価値も上がり、人が集まり、まち全体の魅力につながっていくという考え方です。⁠⁠​

これは、公共施設を「必要だから建てる」「古くなったから建て替える」という発想だけで見ていては足りない、ということだと思います。

その施設が地域にどんな価値を生み出すのか。維持管理費をどう支えるのか。人が集まり続ける仕組みがあるのか。議会としても、そうした経営的な視点を持って考える必要があります。

会社の取締役が会社全体の価値や将来を考えて判断するように、議員も「このまちの価値をどう高めるか」という視点で公共事業を見なければならない、という意味だと受け止めました。⁠⁠​

オガールプラザに見る、公民連携の工夫

紫波町の代表的な取り組みであるオガールプラザは、図書館を中心とした複合施設です。

特徴的なのは、公共施設でありながら、民間の知恵や資金、テナント収益を組み合わせ、持続可能な運営の仕組みをつくっている点です。⁠⁠​

図書館が人を呼び込み、その人の流れがテナントの商売を支え、テナント収益や地代、固定資産税が地域に還元される。

つまり、図書館を単独の公共サービスとして見るのではなく、まち全体の価値を高める核として設計されているのです。⁠⁠​

「人が来る公共施設」があることで、民間も投資しやすくなり、まちに新しい循環が生まれる。

これこそ、公民連携の大きな可能性だと感じました。

「官」と「民」の役割を分けすぎない

講演では、PPP、公民連携についても大切な指摘がありました。

PPPというと、行政と民間が役割分担をして進める事業、というイメージがあります。

しかし岡崎さんは、PPPは単なる「事業」ではなく「プロセス」だと話されました。⁠⁠​

従来の行政の進め方では、先に仕様を決め、建物をつくり、その後に運営を考えることが多くあります。

しかし、それでは実際に運営する人の視点が入らず、使われない施設や赤字を生む施設になってしまう危険があります。

オガールの考え方では、まず経営する人、運営する人を決め、銀行や市場とも対話しながら、規模や仕様を決めていきます。

「誰がどう使い、どう運営し、どうお金を回すのか」を先に考える。これは、公共施設やまちづくりを考えるうえで、とても重要な視点だと感じました。⁠⁠​

子育て支援も「働きたい人が働けるまち」から考える

オガールセンターでは、保育園と小児科が一体となった子育て支援の仕組みが紹介されました。

「働きたいと思っている夫婦に、とことん働いてもらいましょう」という言葉が印象的でした。⁠⁠​

子育て支援というと、保育園の数や制度の話になりがちです。

もちろんそれも大切ですが、子どもが熱を出したとき、保護者が仕事を休まざるを得ない。病児保育につなげる仕組みがない。そうした一つひとつの困りごとを解決していくことが、結果として「このまちで暮らし続けたい」「このまちで子育てしたい」という安心につながります。

宍粟市でも、子育て世代が安心して働き、暮らせる環境づくりは大切な課題です。

制度だけでなく、暮らしの中で本当に困っている場面に届く支援を考えていきたいと思いました。

宍粟市に置き換えて考えたいこと

オガールの事例をそのまま宍粟市に当てはめればよい、ということではありません。

紫波町には紫波町の条件があり、宍粟市には宍粟市の歴史、地形、産業、人のつながりがあります。

ただ、学ぶべき視点はたくさんありました。

たとえば、宍粟市には豊かな森林があります。

山崎町、一宮町、波賀町、千種町、それぞれに自然や景観、地域資源があります。これらを単に「守るもの」としてだけでなく、暮らしの価値、観光の魅力、子育て環境、健康づくり、産業づくりにつなげていく視点が必要だと感じました。

また、公共施設についても、建てる・残す・減らすという議論だけではなく、

「その場所が地域の価値を高めているか」

「人が集まる理由をつくれているか」

「維持管理を支える仕組みがあるか」

という視点で考えることが大切です。

失敗しないことより、学び続けることが大切⁠​

まちづくりに完璧な正解はありません。

人口減少、少子高齢化、インフラの老朽化は、すでに以前から分かっていた課題です。だからこそ、今ある課題を先送りせず、官と民が知恵を出し合い、試しながら、学びながら進めていくことが必要です。

公民連携には、民間の知恵や技術、柔軟な発想が必要です。

一方で、実行のための権限や覚悟、勇気は行政や議会の側にも求められます。⁠⁠​

今回の講演を通して、議員として公共事業やまちづくりを見る目を、もっと磨いていかなければならないと感じました。

宍粟市の土地、公共施設、自然、人のつながりをどう活かし、次の世代にどんなまちを引き継ぐのか。

その問いを大切にしながら、これからも学び、考え、行動していきます。

他市町との議員さんとも交流し、様々な自治があり、個性豊かな市町を議員さんたちを通して見えてきます。

名刺も交換させていただいておりますので、また更なる情報交換をさせていただきたいです。

帰り道、最寄り駅からうっすら琵琶湖が見えます。

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